フェニルケトン尿症とは遺伝の病気?原因で気を付けたい食事と具体的な症状や治療法
赤ちゃんが生まれると、殆どの場合で精神や運動面での発達障害の早期発見のための新生児マス・スクリーニングが行われます。フェニルケトン尿症も検査項目の1つであり、いち早く治療を開始できることが今後の健康を左右する重要なポイントとなります。あまり聞き慣れないフェニルケトン尿症ですが、どのような病気なのでしょうか?
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フェニルケトン尿症とは?
フェニルケトン尿症とは、必須アミノ酸の1つであるフェニルアラニンを分解できない遺伝性の代謝異常の病気です。
通常フェニルアラニンは酵素によって代謝され、神経伝達物質を作るためのチロシンに変換されます。ところがフェニルケトン尿症の患者は代謝異常があるために、フェニルアラニンが代謝されずに蓄積されてしまうのです。血液中のフェニルアラニン濃度が高くなってしまうと、脳や神経に悪影響を与えます。
そうなってからでは厄介なので、まだ何の症状も見られない生後4、5日に検査をすることがとても重要な疾患なのです。
フェニルケトン尿症の具体的な症状とは?
身近にいなければ「フェニルケトン尿症って?」と未知の病気と感じることでしょう。そこでフェニルケトン尿症の具体的な症状を知って、少しだけ知識を深めてみましょう。
精神発達障害や知的障害
乳児の時にはあまり見られませんが、病気を放置していると2、3歳で精神や知的の面で障害が見られるようになります。人の介助なしでは家庭や社会で適応できない状態です。コミュニケーションが十分にとれない、自分の身の回りができないなど。
運動発達障害
生後半年位で運動発達の遅れが目立つようになります。平均的な運動発達から大きく外れることで分かります。
ひきつけ、痙攣発作
フェニルケトン尿症の重症度によっても違います。特に重い病症の場合「古典的フェニルケトン尿症」と呼ばれ、何も治療が施されずに成長すると、ひきつけ、震え、痙攣発作が見られるようになります。
ネズミの尿のような臭い
治療をせずに放置していると、次第にネズミの尿のような臭いがするようになります。これはフェニルアラニンが蓄積されたことによるフェニル酢酸の臭いが関係しています。
肌や髪の毛の色素が薄い
フェニルアラニンが代謝されるときに、メラニン色素が作られます。ところがフェニルケトン尿症の場合、フェニルアラニンが体内に留まったままなので、メラニン色素が不足します。その結果肌や髪の毛の色素が薄い状態になります。
フェニルケトン尿症の治療法とは?
フェニルケトン尿症の症状は新生児マス・スクリーニングで発見し、早期に適切な治療をすれば防げることです。まず一番初めに出現する可能性が高い知的障害を予防するために、生後2、3週間頃から血中フェニルアラニン濃度が10mg/dl以下になるように制限を始めます。
ただしフェニルアラニンは必須アミノ酸であり、体内で作ることはできないのでコントロールが必要です。天然のタンパク質には豊富なフェニルアラニンが含まれているので、食事療法が基本となります。
フェニルアラニン除去ミルク
新生児マス・スクリーニングの検査でフェニルケトン尿症が発見されたら、フェニルアラニン除去ミルクを始めます。症状の見られない生後すぐから開始することがポイントです。
タンパク質の制限食
離乳食を始める際に基本となるのがタンパク質を制限した食事療法です。低タンパクの野菜、いも類、果物に加えて、フェニルアラニン除去ミルクで栄養バランスをとります。
成人での経過観察
成人になってもフェニルアラニンの血中濃度が10mg/dl以下を保つ必要があります。通常の食事でこの値を下回ることができれば治療を止めることができます。ただし経過観察をしながら値を超えるようであれば、一生涯食事制限などで治療を続けなければなりません。